oto`s life

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読書嫌いのための図書室案内 青谷真未 【感想】 〜読書嫌いな彼と読書好きな彼女の共同作業〜

こんにちは

オトです

 

今日は青谷真未さんの「読書嫌いのための図書室案内」についてお話ししたいと思います。

つい最近youtubeで、この本を紹介している方がいて書店に行った時にふとそのことを思い出し、購入しました。

 

この本で初めて出会う作家さんでしたが、キャラクターそれぞれの個性や言動がどれも興味深く引き込まれるような物語でした

 

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読書嫌いのための図書室案内

あらすじ

読書が嫌いな高校二年生の荒坂浩二は、ひょんなことから廃刊久しい図書新聞の再刊を任される。本好き女子の藤生蛍とともに紙面に載せる読書感想文の執筆を依頼し始めた浩二だったが、同級生の八重樫、美術部の緑川先輩、生物の樋崎先生から、執筆と引き換えに不可解な条件を提示されてしまう。その理由を探る浩二と蛍はやがて3人の秘めた想いや昔学校で起きた自殺事件に直面し・・・。本をめぐる高校生たちの青春と秘密の物語。

 

真逆な2人の共同作業

 

本嫌いな荒坂浩二と本好きな(本好きという言葉では済まされないレベルの活字中毒者)藤生蛍が廃刊になっていた図書新聞を再刊させるために2人で行動を共にするようになる。

 

楽そうだから、という理由で図書委員になった荒坂君。そういう人いたなあと思いながら読んでいましたが、そんな荒坂君は初めの委員会で好きな本を1人一冊ずつあげてと言われ「特にありません」と答えたことがきっかけで図書新聞の再刊を命じられる。

 

初めは、いかにも高校生らしく本が好きなら藤生に全部任せてしまえば良いと甘い考えでいた荒坂君に、図書室の先生である(2人に再刊を命じたのもこの先生)河合先生はそれをズバリと指摘し、「藤生さんだけに押し付けるな」と釘をさした。

高校生が考えていることは、その道を通って来た大人たちもよくわかることで、さらには教師は子供を見るプロだから見抜かれるのも一瞬で苦笑した。

 

しかし、荒坂君は不真面目な高校生かと思えばそうでもない。

釘を刺された後の行動力は徐々に増していくし、言葉を発すること自体が苦手な藤生さんに対しても最後まで耳を傾け聞いてあげている。偏見や人を一目で判断しない荒坂君は、きっととても優しい人なんだと思う。

 

 

藤生さん

 

荒坂君と共に動くことになった藤生さんは、いつも教室で本を読んでいる女の子。言葉を発することが人が近づくとビクッとし、話す時はしどろもどろだ。重度の活字中毒者であり文字があるとすぐに読んでしまうほど。

 

しかし、藤生さんは本の話をするときだけ、人が変わるのだ。

目を見て、言葉が次から次へと止まることなく出てくる。

 

突然藤生の声が大きくなる。

それまでは締め忘れた水道の蛇口からぽたり、ぽたりと水が滴るような調子で呟き続けていたのに、突然蛇口を前回にしたように。僕が「知らない」と答えるや否や、蛇口どころか温泉の給湯口が湯を吐く勢いで藤生はまくしたてた 

 

この表現で少し笑ってしまったし、すぐに藤生さんがどんな話し方をしているのかを想像できた気がして楽しい。例えが上手いというか、表現が面白い。

 

 

 個性豊かな登場人物の隠された想い

図書新聞に載せるからと読書感想文の執筆をお願いし始めたが、スムーズにはいかない。

タイトルのわからない感想文を提出し「なんの本か当てて欲しい」と言って来た美術部の緑川先輩や、まずは荒坂君が書いたものを見たいという生物の樋崎先生。

 

途中からは荒坂君の気持ちの変化も見所で、様々な人たちが抱えているものを取り除くために奮闘する姿は見られ、なんだか最初に藤生さんに全てを押し付けようとしていた荒坂君が嘘みたいだ。

 

緑川先輩の罪悪感や葛藤、樋崎先生の後悔や思い。

それぞれの感想文を集めるために2人は走る。

 

それはとても魅力的な2人の姿だった。

 

どうして人は本を読むのか

 

この世にある物語は、すべて予言の書になり得るからです

中略

いつか自分に降りかかるかもしれない人生の難題や、そのときの最良の選択を見せてくれる見本です。

 

少し納得できてしまった。 

自分に何かあったとき、その見本を元に選択肢が増えるかもしれない、乗り越えるための術をもてるかもしれない。

 

そう考えたらやっぱり、本を読むことはやめられない。

 

 

最後に

 

一般庶民はね、小説を読んで初めて自分以外の人間にも感情があることを知ったんだよ

 

この本で一番印象に残った部分だ。

他の人間にも感情があることを、心があることを知ったから、人を傷つけてはいけないことを覚えた。

 

読書が嫌いな人、苦手な人にぜひ読んで欲しいと思う本だった。

読書嫌いは荒坂君に、読書好きは藤生さんに自分を重ねながら読み進めていって欲しいと思う。

 

ではまた。

 

 

読書嫌いのための図書室案内 (ハヤカワ文庫JA) [ 青谷 真未 ]